こんにちは!本日もよろしくお願いします。
前回の続きです。では、どうぞ。
1、日経アートの神保町特集
それは某大手古本チェーン店の雑誌コーナーにありました。
僕はこのチェーンの他店舗で毎日のように商品の補充をしておりましたので、どこにどんな本がある可能性があるか、どの棚がお買い得なのか、またもし間違った場所に補充してしまう場合はどういうところに目当ての本が紛れ込んでいるかなどを知り尽くしていたので、近くを通りかかっては速足でローラーしていました。
そんな時に数年バイトしていた僕でも見たことのなかった美術雑誌が目に入ったんです。それが『日経アート』でした。
後に調べたところ、この雑誌は1999年3月号をもって休刊になっていて、そのまさに休刊号が僕を物故洋画の世界に導いたのでした。
『日経アート 特集:絵画購入バイブル’99 美術散歩・神田神保町』(1999年3月1日発行 日経BP社)
早速購入して家でじっくりと目を通しました。まさかいつも通っていた神保町に画廊があったなんて!
画廊というものは銀座とか京都とかそういうところにしかないと思っていました。「銀座の画廊」。フリーターの僕がおいそれと入れそうにない響きです。しかし、「神保町の画廊」なら慣れ親しんだ土地ですし、なんとなく行けそうな気がします。僕は知識だけでなく、そろそろ本物を見てみたいと思い始めていました。
そこには計6店の画廊が載っていました。すぐに今でも営業しているかネットで検索します。するとほとんどの画廊が営業していることがわかりました。(この特集に載っていた「高木美術」さんは神保町でも古くからの画廊だったそうなのですが、残念ながらこの当時すでに亡くなっていました。鋭い眼光の写真を見るにつけ、お会いしてみたかったなぁと思います)
山田書店美術部、原書房版画部、版画堂、早池峰堂どこも健在でした。
「よし、なら次の休みにお店に行ってみようか!」
と、なるのが普通なのでしょうが、コミュニケーション能力が著しく欠如していると自覚のある僕は
「でも、僕みたいな素人が行ってもいいのかなぁ……それに、お金も持ってないし……」
などと、うじうじし始めました。それに今となっては版画堂さんも早池峰さんもとっても気さくで優しい方々と知っているのですが、この雑誌に載っていた写真は「やったるで!」とばかりに皆、真剣な眼差しをしていたので僕は
「怖そう……」
とビビッてしまったのです。
でも、そんな中に一人だけ満面の笑みで写っている方がいました。それが「いのは画廊」の猪羽さんでした。神保町一古い「無名作家」専門店。そんなキャッチコピーが書いてあります。
「この人のところになら行けるかもしれない」
そんな他の方々に大変失礼なことを思いながら僕は改めて、いのは画廊のホームページを開きました。
2、ネット上ほぼ唯一の情報源「いのは画廊アーカイブ」
いのは画廊のホームページはとてもシンプルなものでした。また、数年前に一度店を畳んだけれど、ちょうど前年に場所を移して再開したところだということも知りました。
移転先は以前のすずらん通りから靖国通りを挟んで向こう側。版画堂や早池峰堂とも近いこともわかりました。
そしてふとホームページ横に「いのは画廊アーカイブ 日本近代洋画のデータベース」という小さい謎のボタンがあることに気が付きました。(今はなぜかありません。検索すると出てきます)
それを何気なくクリックしたことが運の尽きでした。そこには膨大な数の作家の情報が、しかも画廊が取り扱った実作品の画像と共に体系的にまとめられていたのです。
それはまさにその時の僕が一番求めていた情報でした。
そこから一週間はバイトから帰って来ては、ひたすらノートにこのデータベースで学んだことを書き込む日々が続きました。また、データベースに載っている作家名を片っ端から検索。
そうしているうちにだんだん気が付いたんです。
有名な画家ならWikipediaに細かい情報まで載っているのですが、作品画像まではないこと。また無名画家には作品画像どころか生没年とほんの少しの略歴しか載っていないことに。中には検索してもこの「いのは画廊アーカイブ」にしか情報が載っていないなんてことも多々ありました。
つまり、ネットには物故洋画の情報はほとんどない!
本当にこの「いのは画廊アーカイブ」がほぼ唯一の資料と言っても過言ではないでしょう。他にも『落合学 落合同人ブログ』さんや『UAG美術研究所 湯上がり美術談義』さんなどのサイトも素晴らしく、いつも拝見しているのですが、やはり実作品を見て筆のタッチやサインの形などを確認できるのは、ネットでコレクションする時の大きな助けになります。
なので、まずはここで勉強してみるのが良いと思います。スマホで寝転がりながら見れますしね。
ちなみにこのデータベースは猪羽さんの息子さんである猪羽恵一さんが作ったもので、恵一さんは現在文京区本郷の「本郷美術骨董館」の副代表、鑑定士として活躍されています。
3、一度目はお留守……二度目の正直!
そうこうしているうちに時が過ぎていくのを感じ僕は我に返りました。
ハッ!また知識だけがついていく!もうウォーミングアップは十分だ!!
いつものウォーミングアップが入念過ぎてなかなか行動に移せない病気をなんとか振り切ってバイトの休日に神保町へ繰り出しました。
ホームページの情報によるとお店の定休日は日曜祝日、オープンは11時。アルバイトは平日が休みだったためちょうどよかったのです。それに、平日の方が神保町での古本あさりも捗ります。
例のごとく早めに神保町に到着し、田村書店や古書かんたんむ(なくなってなってしまって悲しい……)などをウロウロ。11時になるのを待ちます。
そして11時になった時、勇気を出してお店に向かいました。
お店は通りを一本入った奥の雑居ビルの三階にありました。
階段を上り扉の前へ。しかし電気は付いていなくノックするも返事なし。まだ来ていないのかもしれません。ホームページにも一人でやっていると書いてあります。
ならお昼を食べてその後に来ようと思い、そうしましたがその日は結局お店が開くことはありませんでした。今思えば仕入れや売込みに行っていたのでしょう。
次のチャンスは翌週でした。
一週間のバイトを乗り切り、雑居ビルの階段に舞い戻ってきました。
次は扉の中の電気が付いていました。
今回はここまで!ありがとうございました!ではでは、また~。