青春群像劇『池袋モンパルナス』

こんにちは!

本日もよろしくお願いいたします。

1、物語

人物の名前を覚える際、単に事典をめくっているだけでは覚えきれないことがあります。事典には作品図版も載っていないので尚更です。

そんな時は物語の力を借りましょう!まずおすすめの一冊が、

『池袋モンパルナス』宇佐美承(集英社 1990)

です。

『池袋モンパルナス』宇佐美承(集英社 1990)
献署名入り!
文庫版もあります。

日本洋画史の中でとりわけコレクターに人気のある界隈がいくつかあります。「中村彝周辺の落合界隈」「戦前渡欧画家のパリ界隈」「岸田劉生周辺の草土社界隈」そして「池袋モンパルナス界隈」です。細かく言えばもっとたくさんありますし、時代が下るほどにどんどん細分化されていくわけですが、基本的にはみな若い頃に知り合った仲間たちと終生交流していくことが多い印象です。

近年さまざまな美術館で池袋モンパルナス関連の展覧会が開かれ、知名度もぐっと上がってきていますが、やはりこの本の功績が大きいと思います。

「池袋モンパルナス」とは当時の池袋が田舎で、金のない若い芸術家や美学生らがそこに建てられたアトリエやアパートに多く集まっていたことから、パリのモンパルナスになぞらえて詩人の小熊秀雄(1901-1940)が名付けたとされています。

池袋モンパルナスの物語はまず、この小熊秀雄から回り始めます。小熊はその破天荒かつ繊細な振る舞いで画家と交流し39歳で血を吐いて死ぬ。

この物語は死した画家が多く中心に添えられます。靉光、松本竣介、佐伯祐三、前田寛治、長谷川利行など……実際には当時を知る画家は多く残っていて、この本は著者のその画家らへの並々ならぬ取材の賜物なわけですが、昔を語る時、死者について多くを語ってしまうのは当然と言えば当然なのかもしれません。

幾分ドラマチックに語りましたが、本文はとても淡々とした文章で構成されています。しかし、それでも感動してしまうのは、当時の日本の底抜けな明るさと、その裏にある戦争と徴兵、それでも前向きに生きた若者の懸命さがまぶしく、どこか羨ましく思ってしまうからでしょうか。

なので僕も当時の画家の作品はつい探してしまいますし、関連画家の作品も見つけるとつい欲しくなってしまいます。まさに物語の力ですね……

2、素晴らしい索引

この名著はぜひ読んでもらうとして、この本には内容の他にもうひとつ、素晴らしいものが付いています。

それが巻末の人物名索引です!

なんとこれを見れば、どのページにその個人名が出ているか一発でわかるという。よくぞ付けてくれた!神機能!

これがあれば購入した作品の画家の物語や、当時の人間関係などにすぐにアクセス可能に!(残念ながらほぼ登場していないことも多々あります)

この超便利機能、索引のない本も多いですが、紙書籍大好きな僕としては、今すぐ全書籍に導入してほしい!ほんと、お願いします……

また、参考文献一覧もとても有用です!ここから新たな資料を手に入れましょう。

というわけで、この本はたとえ全部読まなくとも持っているだけで大変有用ですので、こちらも一家に一冊いかがでしょうか?

ちなみにやはりこちらも絶版です……でもわりとすぐ手に入ると思いますので、探してみてください。

3、おわりに

池袋モンパルナスの展覧会の図録を僕は一冊も持っていないのですが、今回改めてこの本を手に取ってみて、また探してみようと思いました。

僕もまだまだ知らないことだらけですし、持っていない資料もたくさんあります。

これからもブログを更新しながら、共に学んでいけたらと思います。

お読みいただきありがとうございました!

ではでは、また~!

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