田中稲三(??-??)
略歴
群馬県に生まれる。
川端画学校で絵を学ぶ。
その後、帝展で活躍。1929年 第10回帝展に『窓邊静物』を出品。
東京朝日新聞社社員。東京市杉並町天沼に住む。
参考文献:『増訂 現代書画家名鑑』齋藤恵太郎編纂(大毎美術社 1929)
ヤフーオークションにて購入。作者不詳で出ていました。
田中稲三の油彩画で室内の静物を描いたものです。
制作年は昭和8年(1933年)5月とあります。
このように、はっきりと裏書きがあるにも関わらず、毛筆が読みにくい、または読めたとしても名前を知らないという理由で作者不詳になっていることは多いです。
田中稲三は「いなぞう」ではなくて「とうぞう」と読むらしいです。田中は僕の地元群馬県出身の画家なので頭の片隅に入れていました。今回はそれが役に立った感じです。
とは言っても、『20世紀 物故洋画家事典』にも載っていませんので、生没年月日もわからず。まだ群馬の美術の専門書や美術年鑑を調査したわけではないので、見つかり次第追記したいと思います。
さて、作品としてはざっくりとした筆遣いで静物をデフォルメして描いており、当時のフォーヴの日本洋画会への影響力の強さが伺えます。しかし、何と言ってもこの作品の特徴はタイトルにもある通り、背景の黒です。
この黒く塗られたバックが雰囲気を決定させていますが、筆遣いの柔らかさからか、決して暗くはなっていないのが不思議な感じです。(桜井浜江の瓶の静物画のシリーズを思わせます)
なぜ、このような背景になったのか、その理由の一端になるかもしれない記述を見つけたので以下に引用します。
●田中稲三氏
熊岡 迷ってゐる感じだ、色調の薄さ、いかにも弱々しい、窓外の描方等常套的な弱調子だ。もつと強くて邪魔にならぬ発見があると好い。
田邊 窓の外の芋畑が気になる
吉村 前の静物はいゝ、あの調子で全體が行つてると猶よい。
奥瀬 以前から見ると元氣がある。
『美術新論 帝展號 第四巻 第十一號』(美術新論社 1929)p.28「帝展合評 出席者 槐樹社同人」より
この座談会的合評会の出席者は奥瀬英三、金澤重治、熊岡美彦、高間惣七、牧野虎雄、大久保作次郎、金井文彦、齋藤与里、田邊至、吉村芳松らです。
これを読むとわかる通り、田中はおそらくこの合評を読んでいて、諸先輩方のアドバイスを忠実に実行しています……
なんて素直な稲三!!
事実かどうかの検証としてはまだ足りないとは思いますが、ここまであからさまだとちょっと笑ってしまいます。(すいません)
僕は帝展出品作の芋畑も好きですが、確かに少しうるさい気もします。
でも、だからといって黒一色とはなかなか思い切ったというか、もっと他になかったのかと思わないでもないですが、小品だからなんとか成り立っているという気がします。
田中の作品は全くと言っていいほど、市場に出ていないです。故に値段の相場も存在していないと思います。なので、情報が極端に乏しく、情報が乏しいからますます出てこないという悪循環にあります。
こういった画家はとても多いです。戦前の活躍は見て取れても、戦後の行方はわからないパターンもよくあります。戦後は画家をやめてしまった人も多いのかもしれません。
これからも少しずつ、より多くの画家の作品をアーカイブしていきたいと思っています。
田中稲三についても、何か情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非ご教授ください。
よろしくお願いいたします。
Hi, I bought the oil painting in Taiwan recently. The online Japanese antiquities store sold the painting. The painting signature also showed ‘田中稲三’ on back. However, it’s hard to find the profile about Tanaka Tozo. Thank you to share Tanaka Tozo’ s information in Internet.
https://imgur.com/a/m9Htw98
https://imgur.com/qQFYMlL
https://imgur.com/SBoRaFD
Thank you for your comment! I am happy to help.
It’s a beautiful picture! It is the work of Tozo Tanaka. Thank you for showing me.
I will continue to search for new information. Tank you!