永井武夫『稲むらの春』

永井武夫 『稲むらの春』 1938年 油彩・カンヴァス 45.5×38.0cm 左下に署名・年記 Takeo.38 ブログ主蔵 
NAGAI Takeo 『Countryside spring』 1938 Oil on canvas 45.5×38.0cm Signed and dated lower left Private collection

永井武夫(??-??)

略歴

白日会に出品。

それ以外は不明

ヤフーオークションにて購入。

永井武夫の油彩画で山と積み藁を描いた風景画です。

制作年は1938年で、この時代らしいというか、この時代でしかほとんど見られない画風となっています。

この作品は作者不詳ではないですが、作者がどんな来歴の人物かわからないで買っているので、ただただ絵に惹かれて購入しました。

色彩がとにかく明るく、画面のピントも全体的に合っているにも関わらず、筆遣いは大胆。結果的にどこかシュールといいますか、非現実感が漂っています。特に空と雲なんかは完全に嘘な空と雲で、これを『稲村の春』と普通のタイトルで普通の風景画として鑑賞させようとするとは……狙っていたのならすごいですが、おそらく当時はこういった画風が日本洋画の主流だったはずで、本当に普通の風景画として制作され、需要されていたんだと思います。

作者の永井武夫について、今のところ得ることができた情報は、池袋モンパルナスでも登場した詩人の小熊秀雄の白日会の展評で取り上げられていることぐらいです。現在、青空文庫で読めますがここに引用します。

永井武夫……白日会の中から近代人は誰かと選んだら私は永井武夫を指す、この近代性はちょつと他の展覧会にこの人ほどに、健康な近代性をもつた人は珍らしい。実際いふとこの位の近代性はすべての画家がもつてゐるのがあたりまいであるがそれがない。他の人々はあまりに伝統的であり伝統打破に臆病である。永井武夫の事物の把握の明確さ(正確さとは又別の意味である)は非凡なものがある、まとめ上げの美しさもあれほど出来る人は洋画家には少ない(日本画家にはずいぶんゐる)作家は仕事を大切にしてほしい、そして主題も大いに野心的になれないものかしらと思ふ。僕が保証する大いに我儘な行き方で自由なテーマを選んでほしい。

『小熊秀雄全集 19 美術論・画論』小熊秀雄 底本『新版・小熊秀雄全集第五巻』(創樹社 1991)「白日会展」 青空文庫より

御覧の通り、すごいべた褒めです。この時の出品作がどんなものだったのか、とても気になります。

とりあえず、小熊の言う近代性とはどういったところを指しているのか、『稲むらの春』の題材は伝統打破足り得るのかという疑問は当然湧いてきますが、画家にも色々な時期がありますので、今は小熊にここまで書かせたという事実だけ覚えておくことにしましょう。

永井の作品はこれの他には一つも見たことがありません。ネットオークションはおろか、図版でも見かけません。永井がどのような人生を歩み、他にどんな絵を描いていたのか、わかり次第追記していきたいと思います。

もし、何かご存じの方がいらっしゃいましたら、ご教授願いたいです。

よろしくお願いします。

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